[ルール]ジャンプ要素/6種類のジャンプ要素は踏切で見極める

黄色背景部分が前年シーズンからの変更

ジャンプとは?

ジャンプとは、助走から跳びあがってから体をひねって回転をして着氷する、フィギュアスケートにおいて最も分かりやすく有名な技です。男女シングルペアでジャンプは行われます。アイスダンスではジャンプは禁止されています。

ジャンプ要素は、ジャンプの回転数とジャンプの種類によって評価される要素(エレメンツ)です。ジャンプ要素を見極められるようになるには、ジャンプの回転数とジャンプの種類を理解する必要があります。

競技で使用が認められる6種類のジャンプ

フィギュアスケートのジャンプには、様々な種類が存在します。現在ISUの定める試合で認められているのは、下記6種類のジャンプです。

略記号 ジャンプの名称 難度(同じ回転数の場合)
T トウループ 低難度





高難度
S サルコウ
Lo ループ
Eu(Euler) オイラー
F フリップ
Lz ルッツ
A アクセル

この6種類のジャンプの種類を解説していきます。跳び方(反時計回りの場合)、ジャンプ名称の由来や特徴などをまとめました。

トウループ(T)

ジャンプの名称 トウループ
略記号 T
跳び方 右足のアウトサイドエッジで後ろ向きに滑り、左足のトウをついて跳ぶジャンプ。
名称の由来 つま先(トウ)を付いてジャンプをすることが名前の由来。
特徴
  • 一番簡単とされるジャンプ。
  • コンビネーションジャンプで、セカンドやサードジャンプとして最も使用される。

サルコウ(S)

ジャンプの名称 サルコウ
略記号 S
跳び方 左足のインサイドエッジで後ろ向きに滑り、トウをつかず右足を前に振り上げて跳ぶジャンプ。
名称の由来 1909年にスウェーデン人のウルリッヒ・サルコウ選手が初めて跳んだのが由来。
特徴
  • 飛び上がる瞬間に、両足が八の字のような状態になる。
  • 右足を若干振り上げるような動作がみられる。

ループ(Lo)

ジャンプの名称 ループ(ヨーロッパでは別名がリットベルガー)
略記号 Lo
跳び方 右足のアウトサイドエッジで後ろ向きに滑り、トウをつかず跳ぶジャンプ。
名称の由来 輪(ループ)を描くジャンプであることに由来。または、1910年にドイツ人のヴェルナー・リットベルガー選手が初めて跳んだのが由来。
特徴
  • 跳ぶ瞬間、腰が椅子に腰かけるような感じに低くなる。
  • ジャンプに入る前から輪(ループ)を描く人もいる。
  • コンビネーションジャンプで、セカンドやサードジャンプとしても使用される。

オイラー(Eu(Euler))

ジャンプの名称 オイラー
略記号 Eu(Euler)
跳び方 右足のアウトサイドエッジで後ろ向きに滑り、トウをつかず跳ぶジャンプ。
概要
  • ジャンプ・コンビネーションの中でリストにある2つのジャンプの間で行われるループジャンプ(ハーフループ)。
  • 2017年シーズンまではループジャンプ(ハーフループ)であったが、2018年シーズンからオイラー・ジャンプ(ハーフループ)は,SOV表で示されている価値を持つリストにあるジャンプとみなされるようになった。

フリップ(F)

ジャンプの名称 フリップ
略記号 F
跳び方 後ろ向きで左足のインサイドエッジで滑り、右足のトウをついて跳ぶジャンプ。
名称の由来 反転するように飛ぶことから、英語で反転を意味するフリップ(Flip)が由来。
特徴
  • フリップを跳ぶ前の助走は前向きの選手が多い。
  • ルッツジャンプとの見極めが困難。

ルッツ(Lz)

ジャンプの名称 ルッツ
略記号 Lz
跳び方 左足のアウトサイドエッジで後ろ向きに滑り、右足のトウをついて跳ぶジャンプ。
名称の由来 1913年にオーストリア人のアイロス・ルッツ選手が初めて跳んだのが由来。
特徴
  • 他のジャンプより長めに、後ろ向き左足で滑ってから跳び上がる選手が多い。
  • フリップジャンプとの見極めが困難。

アクセル(A)

ジャンプの名称 アクセル
略記号 A
跳び方 唯一前向きで跳ぶジャンプ。左側のアウトサイドエッジで滑り、トウをつかずに跳ぶジャンプ。
名称の由来 1882年にノルウェー人のアクセル・パウルゼン選手が初めて跳んだのが由来。
特徴
  • 踏み切る時は前向きでも、降りる時は他のジャンプと同じく後ろ向き。
  • 他のジャンプより半回転多くなるので、最も難しいとされるジャンプ。
  • トリプルアクセルは3回転半、ダブルアクセルは2回転半、シングルアクセルは1回転半のジャンプの回転数となる。

ジャンプの種類は踏切に注目して見極める

6種類のジャンプの特徴について解説してきましたが、実際にテレビ観戦の最中にジャンプの種類を見極めるのは難しく感じるかもしれません。

フィギュアスケート素人でも簡単にジャンプの種類を見極める方法は、踏切の瞬間に注目することです。

まずは①~③でチェック

まずは①~③を順番に確認します。

①前向きに飛んでいるか

ジャンプを踏み切る瞬間、前向きなのか後向きなのかを確認しましょう。フィギュアスケートの6種類のジャンプの中で、前向きに踏み切るのはアクセルジャンプだけです。よって、前向きに踏み切っていたらアクセルジャンプで間違いありません。

ジャンプの名称 踏切が前向きor後向き
トウループ 後向き
サルコウ
ループ
フリップ
ルッツ
アクセル 前向き

②トウを突いているか

フィギュアスケートに使用するスケート靴のつま先部分には、ギザギザになったトウ(トウピック)が付いています。ジャンプやスピンを行うのに欠かせないのがトウになります。

6種類のジャンプ要素は踏切で見極める

このトウを使用して跳ぶジャンプは、素人でも見極めやすいです。滑ってきて跳ぶ瞬間にトウをカツっと突きます。

トウを使用するか否かで、6種類のジャンプを区分けしてみます。

ジャンプの名称 踏切の際にトウを突くor突かない
トウループ トウを突く
サルコウ トウを突かない
ループ
フリップ トウを突く
ルッツ
アクセル トウを突かない

この時点で、6種類のフィギュアスケートのジャンプは、下記の3つに区分けされます。

  前向きor後向き トウを突くor突かない ジャンプの名称
1 前向き トウを突かない アクセル
2 後向き トウを突かない サルコウ
ループ
3 後向き トウを突く トウループ
フリップ
ルッツ

③踏み切る足は左右のどちらなのか

最後に注目するのは、ジャンプを踏み切る際に使用しているのは左右の足のどちらなのかという点です。

左右のどちらの足で踏み切るか(反時計回りの回転の場合)で、6種類のジャンプを区分けしてみます。

ジャンプの名称 滑走→踏切
トウループ 右→左
サルコウ 左→左
ループ 右→右
フリップ 左→右
ルッツ 左→右
アクセル 左→左

この時点で、6種類のフィギュアスケートのジャンプは、下記の5つに区分けされます。

  前向きor後向き トウを突くor突かない 滑走→踏切 ジャンプの名称
1 前向き トウを突かない 左→左 アクセル
2 後向き トウを突かない 左→左 サルコウ
3 後向き トウを突かない 右→右 ループ
4 後向き トウを突く 右→左 トウループ
5 後向き トウを突く 左→右 フリップ
ルッツ

この時点で、1~4のアクセル・サルコウ・ループ・トウループの4種類のジャンプが見極められたということです。

残るフリップとルッツの見極めはエッジに注目

6種類のフィギュアスケートのジャンプの中で、最も見極めるのが難しいのがフリップとルッツになります。ここで注目するのは、ジャンプを踏み切る際に使用しているエッジが、インサイドなのかアウトサイドなのかです。

フィギュアスケートに使用するスケート靴の刃の部分をブレードと言います。ブレードをかかと側(後方側)から見ると下記のようになります。

6種類のジャンプ要素は踏切で見極める

氷に接する部分(エッジ)の内側部分をインサイドエッジ、外側部分をアウトサイドエッジと言います。左右の足それぞれにインサイドエッジとアウトサイドエッジがあるので、4種類のエッジの種類が存在することになります。

インサイドエッジ

アウトサイドエッジ

ジャンプを踏み切る際に使用しているエッジが、インサイドなのかアウトサイドなのか、左右のどちらの足で踏み切るのか、これを踏まえて6種類のジャンプを区分けしてみます。

ジャンプの名称 滑走→踏切
トウループ 後向きで右足のアウトサイドエッジ

左足のトウを突いてジャンプ
サルコウ 後向きで左足のインサイドエッジ

そのまま(左足のインサイドエッジ)でジャンプ
ループ 後向きで右足のアウトサイドエッジ

そのまま(右足のアウトサイドエッジ)でジャンプ
フリップ 後向きで左足のインサイドエッジ

右足のトウを突いてジャンプ
ルッツ 後向きで左足のアウトサイドエッジ

右足のトウを突いてジャンプ
アクセル 前向きで左足のアウトサイドエッジ

そのまま(左足のアウトサイドエッジ)でジャンプ

フリップとルッツの違いは、踏み切るときのエッジがインサイドなのかアウトサイドなのかという点になります。

ジャンプを踏み切る際のエッジが内側か外側か、演技中に見極めるのは大変難しいです。まずはスロー再生を見て判断できるようになりましょう。徐々に見慣れてくると、演技中でもインサイドかアウトサイドか、エッジの見極めも出来るようになります。

ジャンプの回転方向と踏切の際のターン方向

フィギュアスケートの6種類のジャンプは、踏み切る方向、トウを突くか否か、踏切りで使用するエッジの種類から区別されています。この6種類のフィギュアスケートのジャンプを、さらに進行方向とジャンプの回転方向を踏まえて考えてみます。

トウループ(T)

反時計回りの回転の場合、トウループは右足のアウトサイドエッジで後ろ向きに滑り、左足のトウをついて跳ぶジャンプです。ジャンプの回転方向・踏切の際のエッジのカーブが共に同じ方向を向いており、さらにトウを突くことも出来る為、最も簡単とされるフィギュアスケートのジャンプになります。

また、ジャンプを踏み切る際の足が着地をした際の右足のままなので、コンビネーションジャンプで、セカンドやサードジャンプとして最も使用されるジャンプとなります。

トウループジャンプ

サルコウ(S)

反時計回りの回転の場合、サルコウは左足のインサイドエッジで後ろ向きに滑り、トウをつかず右足を前に振り上げて跳ぶジャンプです。ジャンプの回転方向・踏切の際のエッジのカーブが共に同じ方向を向いている為、トウは突きませんがトウループの次に簡単とされるジャンプです。右足を振り子のように回転方向に振り上げられる点も、ジャンプの基礎点が簡単な部類とされる容易です。

エッジ系のジャンプ(サルコウ・ループ・アクセル)が得意な選手の場合は、最も簡単なジャンプの種類だと難じる場合もあります。安藤美姫選手が女子選手として初めて成功させた4回転ジャンプも、このサルコウジャンプになります。

サルコウジャンプ

ループ(Lo)

反時計回りの回転の場合、ループは右足のアウトサイドエッジで後ろ向きに滑り、トウをつかず跳ぶジャンプです。ループジャンプは、トウループジャンプのトウをつかないバージョンです。ジャンプの回転方向・踏切の際のエッジのカーブが共に同じ方向を向いている点は、トウループジャンプと全く同じです。トウループジャンプとの違いは、左足のトウを突かない点だけです。

サルコウジャンプと同じようにトウを突かないジャンプですが、サルコウジャンプと違い氷面を滑っていないフリーレッグを回転方向にプラスになるような使い方(サルコウの場合はフリーレッグの右足を回転方向に振り上げられる)は出来ません。その為、サルコウジャンプよりは高度なジャンプとされています。

トウループと同様に、ジャンプを踏み切る際の足が着地をした際の右足のままなので、コンビネーションジャンプで、セカンドやサードジャンプとして使用されるジャンプとなります。トウループよりも高度なジャンプの為、コンビネーションジャンプで使用すると高得点を獲得できます。

ループジャンプ

フリップ(F)

反時計回りの回転の場合、フリップは後ろ向きで左足のインサイドエッジで滑り、右足のトウをついて跳ぶジャンプです。

ジャンプの回転方向・踏切の際のエッジのカーブが共に同じ方向を向いているところまでは、サルコウジャンプとまったく同じです。違いはフリーレッグとなる右足の使い方です。サルコウジャンプの場合は右足を振り上げて開店方向にプラスの力としますが、フリップジャンプの場合は右足がトウを突く形で力となります。

また、踏み切る直前まで前向きに滑りながらターンをして後向きになり踏み切るのがフリップジャンプの特徴となります。

フリップジャンプ

ルッツ(Lz)

反時計回りの回転の場合、ルッツは左足のアウトサイドエッジで後ろ向きに滑り、右足のトウをついて跳ぶジャンプです。

ジャンプの回転方向は、他の5種類のジャンプ同様に右利きの場合は反時計回り回ります。しかし、ルッツジャンプの場合は踏切の際のエッジのカーブが、ジャンプの回転方向とは真逆の時計回りとなります。これが、アクセルに次いで難しいジャンプと言われる理由です。

ルッツジャンプ

ルッツジャンプは踏切りが難しいため、多くの選手が後ろ向きに長めの助走をとります。長めの助走を取るため、スケートリンクのコーナーからコーナーに向かって滑りジャンプに入るケースが多く見受けられます。

フィギュアスケート初心者の人は、こういった特徴的な助走を、ルッツジャンプを見極めるコツにするのも良いかもしれません。

アクセル(A)

アクセルは、唯一前向きで跳ぶジャンプです。反時計回りの回転の場合、左側のアウトサイドエッジで滑り、トウをつかずに跳ぶジャンプです。他のジャンプと違い、半回転多く回転しなければいけないため、6種類のジャンプの中で最も難しく基礎点が高いジャンプです。

アクセルジャンプ